ドラクエ7の魔王オルゴ・デミーラは人間の絶望を糧に力を蓄えるといった旨の話を作中で聞くことができます。例えば以下の発言
さまざまな わざわいの種をまき
人間たちが 絶望したところを
いっきに闇に 引きずり込むという…ーー旅の宿屋の老人
人間の なげき 怒り 悲しみ
それらの感情が 魔物にチカラを
あたえているという言い伝えがある。ーー山肌の集落の神官
さらに決め手となるのがフォーリッシュ編のボス、マシンマスターの発言
魔王さまより あずかった
マシン兵団で 人間を きょうふの
どん底に たたきおとす この計画!(中略)
魔王さまの命令など 知ったことか!
人間どもなど すべて
ほろびてしまうが よいわあっ!ーーマシンマスター
つまり、人間を全て滅ぼすことがオルゴ・デミーラの命令違反であると述べているわけです。
この発言からも、オルゴ・デミーラは単純に人間を滅ぼすことを良しとせず、より多くの人間から長期にわたって絶望を搾取することを重視しているのではないかと考えられます。
そこで、今回はドラクエ7の各地に登場したボスキャラクターの中で多くの人間から長期にわたって絶望の感情を搾取できるポテンシャルを持った順にランキングを作ってみたいと思います。
ドラクエ7に登場したボスキャラクター一覧
まずはじめに対象となるモンスターたちをリストアップしていきたいと思います。
- マチルダ(ウッドパルナ編)
- 炎の巨人(エンゴウ編)
- デス・アミーゴ(オルフィー編)
- マシンマスター(フォーリッシュ編)
- あめふらし(ダイアラック・グリンフレーク編)
- アントリア(ダーマ編)
- セト(砂漠編)
- ウルフデビル(クレージュ編)
- タイムマスター(リートルード編)
- グラコス(ハーメリア編)
- りゅうき兵(プロビナ編)
- やみのドラゴン(ルーメン編)
- メディルの使い(マーディラス編)
- ヘルクラウダー(聖風の谷編)
- ボトク(レブレサック編)
- バリクナジャ(コスタール編)
さすが18もの地域が登場するだけあって、各地の支配に関わっていたボスの数も多いですね。ユバール編のみはボスらしいボスが登場していないので含めておらず、あめふらしはダイアラックとグリンフレークにまたがって灰色の雨による被害を与えていたため重複しています。よって、合計16のボスを対象としてそれぞれが人間を支配した手法について見ていきたいと思います。
各地のボスの侵略方法
- マチルダ:ウッドパルナの女性全てを人質に取り、残った男性たちに村を自分たちの手で破壊するよう脅迫
- 炎の巨人:黒い炎の力を利用した炎の山の噴火によりエンゴウを滅ぼす
- デス・アミーゴ:人間と動物の姿を入れ替える
- マシンマスター:からくり兵の軍団を率いた純粋な武力による侵攻
- あめふらし:灰色の雨により全ての人間を石化させる
- アントリア:転職に来た人間の呪文・特技を奪いふきだまりの町に幽閉
- セト:砂漠の城を滅ぼし、魔王像の建設に関わる強制労働をさせる
- ウルフデビル:村人たちを「自称魔王」に洗脳し、神木を切り倒させる
- タイムマスター:橋の開通式の前日を永遠に繰返させる
- グラコス:ハーメリア地方一帯を水没させる
- りゅうき兵:魔物の群れによる侵攻。村人たちの魂を抜き取る
- やみのドラゴン:ボルンガにより制御され、恐怖による支配を行う
- メディルの使い:国王ゼッペルをそそのかし、魔物化させて国を滅ぼさせる
- ヘルクラウダー:リファ族の命の源である聖風の谷の風を奪う
- ボトク:村の英雄である神父を魔物の姿に変え、村人たちに殺させる
- バリクナジャ:生まれてくる子どもたちを魔物の姿に変える
人間の絶望を集める方法
単純に人間を滅ぼしたいだけなら、例えば炎の巨人やグラコスのように物理的な破壊活動を行った方が効率的で確実性も高そうです。
しかし、中にはウルフデビルやタイムマスターのようにかなり回りくどい手段を用いているボスも目につきます。これは上述した通り多くの絶望を集めることがオルゴ・デミーラや他の魔物たちの糧になるからではないでしょうか。この視点で見た場合、逆に一瞬で全てを破壊してしまうというのは人間に一瞬しか絶望を与えられずマイナス評価になり得ます。
これらの点を踏まえて、人間から絶望を最大限搾取してオルゴ・デミーラに貢献したボスが誰かを考えていきます。
絶望の搾取率ランキング
ランク外(短期決戦タイプ)
まず、長期的に搾取を行えないという意味で以下のボスたちはランク外とします。
- 炎の巨人
- グラコス
- りゅうき兵
- メディルの使い
一瞬の破壊活動によって人間を制圧したボスたちですね。もちろん彼らに侵略される恐ろしさは実際に体験したら想像を絶するものでしょう。しかし、今回のランキングの観点はあくまでも人間から多くの絶望を搾取できたかどうかです。よって、短期で人間を滅ぼしてしまった彼らは他のボスと比べると搾取できた絶望の量は少ないと考えます。
ちなみに、少し変わり種のマーディラス編のメディルの使いについては水面下で計略を進めていたので、大多数の人間にとってはある日突然ゼッペルが魔物化して苦しむ間もなく一瞬にして滅ぼされてしまったに違いありません。究極魔法の力は「魔王の気」「大陸をも吹き飛ばす」といった表現もされるぐらいですからね。
ランク外(意識を奪うタイプ)
次に、意識をなくしてしまうタイプの制圧を行ったボスもランク外としたいと思います。
- デス・アミーゴ
- あめふらし
- ウルフデビル
動物化した人間や石化した人間に意識があるかどうかが分からないので難しいところではありますが、動物化や石化が解けた後に全く記憶が残っていないという点を踏まえると、おそらく人間としての意識は失われてしまうのではないでしょうか。となると、絶望を感じることもできなくなるため今回のランキングにおける評価は低くなります。クレージュ編に関してはもはや説明は不要だと思いますが、村人たちがノリノリで魔王を演じているところを見るに絶望を感じている状態ではないと判断できるのでランク外とします。本人が正気を失う前の状態で周りの人間がどんどんおかしくなっていく間はなかなかの絶望感がありそうですが、これも「長期的に」という条件を満たさないのでやはりランク外の対象です。
ランキング上位の候補
さて、ここまできて残る候補は
- マチルダ
- マシンマスター
- アントリア
- セト
- タイムマスター
- やみのドラゴン
- ヘルクラウダー
- ボトク
- バリクナジャ
の9体。この中からベスト3を決めたいと思います。
第3位:セト
第3位は砂漠編よりセト。
砂漠には国が存在しており、暮らしている人々が多いことがまず高評価。また、人間自身の手で人々の希望の象徴である精霊像を魔王像に作り替えさせるというのも救いがないポイントです。
逆に欠点としては、砂漠の城を完全に滅ぼしてしまっている点。もう少し人を残していた方が搾取できる絶望の総量は増えたのではないでしょうか。この点を差し引いて最終的に3位に留めました。
第2位:バリクナジャ
続く第2位はコスタール編よりバリクナジャ。
ボスとしての戦闘能力は正直パッとしない彼ですが、今回のランキングでは2つの点において優れています。
1つ目はコスタールという規模の大きい国を支配下においた点。多くの人間から絶望を搾取できるので他の地域と比べて有利です。
2つ目は生まれてくる子どもをモンスターに変えるという戦略の巧みさです。これは当の両親たちに与える絶望感の大きさはもちろん、周囲の人間に与える影響も絶大です。と言うのは、「もうこの国で子どもが生まれることはない」という意識を植え付けることができるから。そうすると現代日本の出生率の低さなんて目ではありません。完全に出生率0の国になってしまうわけですから、今後人口は減る一方。やがて人口減に伴い国としての体裁を保つこともできなくなり滅びの一途を辿る絶望感を長期にわたって与え続けることができます。武力に頼らずじわじわと絶望感を与え続けるというのが(悪い意味で)高評価のポイントですね。
人間の多さ+期間の長さ。これが決め手です。
第1位:マシンマスター
栄えある(?)第1位はフォーリッシュ編よりマシンマスター。
一見するとプロビナ編のりゅうき兵のように、からくり兵を用いた武力による短期決戦型の支配を行っているように見えるマシンマスターですが、冒頭のセリフでも挙げたように人間に恐怖を与えることを意識していることが分かります。実際、フォーリッシュ編のストーリーを見ると、一度に全てのからくり兵を戦線に出さずにじわじわ波状攻撃をしかけることでフォーリッシュの人々を生かさず殺さず精神的に追込んでいるような演出がされています。手っ取り早くデスマシーンを出撃させていなかったこともその証ですね。
一点気になるのはフォーリッシュの町を陥落させてしまっていた点。より多くの人間に絶望を与えるのならフォーリッシュを攻め落とす必要はなかったのではないかと思います。ただ、それでも町を完全に滅ぼすことはせず生き残っていた人々も結構いたので、生き残りの人々にトータルとしてより大きな絶望を与えるために陥落させたと考えれば納得はできます。
そして何より巻き込んだ人間の数の多さが高評価で、大国フォロッド+比較的栄えている町であるフォーリッシュという2箇所を支配下に置いた点が特筆に値します。
圧倒的武力をあえてセーブして人間を絶望に追い込む彼の采配力は今回のランキングの1位に相応しいと言えるでしょう。
その他のボスの総評
マチルダ
村を破壊させた後、最終的にどうするつもりだったかに左右される。そのまま放置した場合、男性しかいない村でコスタール同様に村の衰退を待つだけという展開ならなかなか絶望感はありますが、村の規模が小さく人間が少ないという点でランク外
アントリア
ダーマ神殿+転職に来た人々を支配下におき、その人間たちだけでふきだまりの町と山肌の集落という2つの集落ができるぐらいなので支配した人間の多さについては高評価。また、ふきだまりの町の「魂砕き」は住民同士の疑心暗鬼も誘える画期的なシステムだと思いますが、中にはスイフーのようにそこの生活に馴染んでしまう人間を出していたり、本質はどうあれその手の救済措置(地下闘技場含む)を用意することで一部の人間には逆に希望を与える結果になっている点がマイナス。
やみのドラゴン
魔物の監視下で生かさず殺さず人間を管理している点は高評価ですが、ルーメンの村の規模が小さいのでランク外。
ヘルクラウダー
リファ族から風を奪う苦しみがどの程度なのか想像が難しいですが「魚から水を奪うのと同じこと」「このままだと死に絶える」と言われていることから遅効性の毒を盛られるようなイメージでしょうか。
なかなか強烈だとは思いますが、それだと余り長いこと生き残ることができなさそうなのと、リファ族の数はそれ程多くはなさそうなのでランク外としています。ただ、順位をつけるならセトに次ぐ4位に位置付けたいですね。
ボトク
レブレサックの村の規模がそれほどでもないことと、ボトクの以下の発言
ケケケッ 神父さえ死ねば
もう 約束は関係ない。
村人ぜんぶ 食いほうだいだ!ーーボトク
この発言から、長期にわたって絶望を与えようとする意思が見られないためランク外です。レブレサックのストーリーはドラクエ7のシナリオの中でも群を抜いて後味が悪く、村人たちも相当負の感情を抱えただろうとは思いますけどね。
最下位:タイムマスター
最後に最下位の発表を。
最下位はリートルード編のタイムマスターです。なぜなら、毎日同じ日を繰返していることに誰も気付いていないから。せいぜい建築家のバロックが少し違和感を感じている程度。これでは人間に絶望感を与えるどころではありません。よって、今回のランキングでは限りなく成果がゼロに近いということで最下位としています。
まとめ
人間から多くの絶望を搾取できるモンスターはオルゴ・デミーラにとって優秀な配下となり得る。この観点において、マシンマスターやバリクナジャ、セトは効果的な支配体制を確立したと言えるが、逆にタイムマスターのような人間に絶望感を与えない手法は余り効果的ではないと考えられる▼