ドラクエシリーズにおいて、他のモンスターたちとは一線を画している存在、ひとくいばことあくまのツボ。
本記事では、彼らの生態について考えた時、ひとくいばこよりあくまのツボの方が生存競争で有利だと言える根拠について述べたいと思います。
ひとくいばことは
初登場はドラクエ3。
宝箱に擬態していることでお馴染みのモンスター。
シリーズを経るごとに弱体化されていますが、基本的には同じエリアに出現する他のモンスターと比べて段違いの戦闘力を持っているパターンが多く、単独で現れるにも関わらず、全滅の危機に追い込まれる経験をしたことがある人も多いはず。
中でもやっかいなのがパーティをまとめて死に追いやる「ザラキ」
他にも高威力の「メラミ」、こちらのMPを奪う「マホトラ」さらにシリーズによっては「2回行動」「痛恨の一撃率が高い」といった特性まで有する強敵。
ダンジョンをある程度進んだ先の絶妙な位置にいたりして、一気に消耗させられるという点もいやらしい。
あくまのツボとは
初登場はドラクエ5。
ひとくいばこの外殻がそのままツボに変わっただけのような容姿をしている。 戦闘時の行動パターンはひとくいばこと似ている部分も多いが、特に圧倒的なHPの高さが特徴。ルカニを使わないとかなりの長期戦になる。
シリーズによっては初見殺し的な場所に置かれている。
トラップモンスターの生態
生きていく上で食料の確保は欠かせません。では、彼らは何を主食として生きているのでしょうか?
答えはもちろん人間です。
これは彼らが擬態している姿によって説明できます。特にひとくいばこの場合顕著ですが、宝箱というのは人間しかその価値を見出すことができない物体です。わざわざそんな姿に擬態しているということは、人間の捕食に特化した生態であると考えるのが自然です。
宝箱に擬態する大きなメリットは相手を油断させることができるという点。
ダンジョンで宝箱を見かけると、つい気が緩んで不用意に近付いてしまうのが人間の性。警戒して近付いてくる相手より簡単に捕食できるであろうことは明らかです。
このことから、彼らにとって餌に困らない場所とはつまり、人通りが多いところということになります。
実は、この条件こそがひとくいばこよりあくまのツボの方が生存に有利であるとする根拠になります。
宝箱とツボの性質
擬態は、場所を選んで行わないと全く意味を成さないどころか、逆効果になってしまうものです。
- 茶色い地面の上で緑色に変色しているカメレオン
- アスファルトの上で擬態するハナカマキリ
といった例のように、場所を間違えた擬態はかえって目立ってしまい、相手に警戒心を抱かせてしまいます。
ひとくいばこについても例外ではありません。宝箱の擬態効果が最大限発揮できるのは洞窟や塔といったダンジョン内部です。街中の宝箱はありえないものではないですが、若干不自然な感じは否めません。
つまり、宝箱の擬態は人通りの多い場所では効果を発揮しにくいんです。
(ゴールド銀行をはじめとして、お店のバックヤードに宝箱が置かれている図がありますが、関係者以外触れないという点で街中であるメリットは活かしにくいです。そもそもあれはゲーム上のグラフィックでは宝箱だけど、本当に宝箱なのか?)
対して、ツボの擬態はどうでしょう?
ドラクエの世界の街中では屋内外問わずいたるところにツボが置かれており、街の風景に溶け込んでいます。
あくまのツボがひとくいばこより優れている理由はここにあります。人通りの多い場所で有効なツボという姿に擬態している。
事実、ドラクエ5やドラクエ6では人里の中であくまのツボが出現するポイントがありました。
- ドラクエ5:山奥の村
- ドラクエ6:ザクソンの村
参考:【あくまのツボ】 - ドラゴンクエスト大辞典を作ろうぜ!!第三版 Wiki*
これはひとくいばこには見られない傾向です。ダンジョンに潜んでいるより、獲物にありつける機会は格段に多いことでしょう。
ひとくいばこのジレンマ
また、ダンジョンに潜むことのデメリットはもう1つあります。
それは、人通りが少ないだけではなく、やってくるのが歴戦の猛者の可能性が高いということです。特に前人未到のダンジョンに現れるような人間相手では、いかにひとくいばこが強いと言えど返り討ちに遭う可能性も十分にあります。
獲物が少ないだけでなく、その獲物にやられる確率が高いような環境で擬態することはとても有効な生存戦略だとは思えません。
では、こんな不利な条件に立たされているひとくいばこがせめてもの活路を見出すとすればどうすればよいのか?
それは、商人や旅慣れていない一般人が通るような交通の要となる洞窟を狙うこと。
イメージとしてはドラクエ3のノルドの洞窟(※1)のような場所がひとくいばこの生息地として最適です。
※1:アッサラーム地方とバハラタ地方を結んでいる洞窟。モンスターは出現しないが宝箱は存在しており、ひとくいばこが潜むには最適(ゲーム中ではひとくいばこは出てこない)
参考:ノルドの洞窟 | HOME > 城・町・村など一覧 - ドラクエ3 攻略プロジェクト
たんすミミックという進化
最近のシリーズではひとくいばこと同種のミミックから派生した「たんすミミック」という種族も見られるようになりました。文字通り、たんすにミミックの顔がついたようなモンスターです。
ここまでの話と照らし合わせると、たんすは街中にあるのが自然な物なので、たんすとして擬態することは人間を狩れる機会が多く有利である・・・と考えたいところなのですが、やはりそれでもあくまのツボの方が優秀であると考えます。
というのは、たんすは確かに街中で見られるものですが、その性質上、どちらかというと商業施設のような人が集中する場所よりは民家に配置されることが多いものだからです。(宿屋や教会といった施設にもあるにはありますが)
仮に民家のたんすにたんすミミックが擬態した場合、その民家の一世代分ぐらいは捕食に成功するかもしれません。しかし、その後はどうでしょう?突然一家全員が姿を消すような不気味な家に人が寄り付くでしょうか。結局は街中であるというメリットを活かせない状態になってしまう可能性が高いです。
そもそも、屋内外問わない上、街中にもダンジョンにも馴染むツボとは擬態の汎用性に格差があり過ぎます。仮にたんすミミックが民家から民家へ渡り歩いて擬態を続けられるような生物であったとしても、あくまのツボが優位であることに変わりはありません。
トラップモンスターは省エネ設計
ここまで彼らが食事が必要であるという前提のもと話を進めてきました。
しかし、彼らは物に命が宿った生命体であり、生きる上で必ずしも捕食が必要であるとは限りません。生命の維持に食事が必要なく、快楽のみを求めて人間を襲うのであれば、餌の少ない前人未到の秘境に潜んでいても特に問題はないでしょう。
が、今回は引き続き彼らに食事が必要なものだとして話を進めます。
不利な環境にも関わらず、ひとくいばこがダンジョン内で生存できているのはなぜなのか?と考えた時、限りなく省エネ設計になっているからだと考えることができます。
宝箱に擬態するということは、基本的には待ちのスタイルで、自分から動いて獲物を探しに行く必要はありません。つまり、移動に無駄なエネルギーを使う必要がないのです。この待ち状態の間はほとんど休眠状態でエネルギー消費をギリギリまで抑えているのではないでしょうか。そうすれば、餌となる人間が少ない環境でも長期にわたって生き延びることが可能です。
また、いざ獲物が現れたという時でも、相手は宝箱に気を取られて油断している可能性が高く、少ない労力で捕食できるというまさに省エネ設計。
それでももちろん餌が多い環境に潜むに越したことはないのですが、ひとくいばこはひとくいばこなりに人の少ない環境で上手にやりくりをしているのだと思います。
しかし、近年の作品では通常のエンカウントで ひとくいばこやあくまのツボが出現することがあってちょっと違和感を感じています。
自分から進んで動き回り、人間を襲いに行くなら擬態の意味がないと思うんですけどね・・・
まとめ
より汎用性の高いツボという擬態を獲得したあくまのツボの方が捕食の機会に恵まれており、生存に有利である。 ▼