ドラクエ5の大きな疑問点の1つとして、キラーパンサーが主人公の幼年期と青年期の合間になぜ海を渡ったのかというものがあります。
彼の行動の動機や、海を渡るために選んだルートについて考察します。
背景
幼年期最後の舞台となるラインハット北東の古代の遺跡。主人公はここでゲマに敗れて連れ去られてしまいますが、ベビーパンサー(以下ゲレゲレ)は「そのうち魔性を取り戻す」とされ、ゲマたちから捨て置かれます。
その後、主人公とゲレゲレは10年の歳月を経てカボチ村にて再会を果たしますが、古代の遺跡からカボチ村は海を隔てた別の大陸に存在しています。ゲレゲレは一体どんな経緯でカボチ村のある西の大陸へ渡ったのでしょうか?
ゲレゲレの行動の動機
この問題を考える上で重要なのが、ゲレゲレがパパスの剣を持ち歩いていたという点です。パパスは古代の遺跡でゲマに殺されたので、彼の所有していた剣も当然古代の遺跡に残されたはずですが、その後魔物の棲み処でゲレゲレがパパスの剣を所有していたことから、ゲレゲレがパパスの剣を持って移動していたことが分かります。
しかし、これは非常に不自然な行為です。
なぜなら、ゲレゲレが野生に帰って生きていく上でパパスの剣は不要の長物だから。さらに言えば、自分の行動を制限する足枷にすらなるものです。
そんな足枷にしかならない道具をただ「主の形見だから」という理由だけで持ち歩くものでしょうか。僕はゲレゲレがパパスの剣を運んだのには明確な理由があったと考えます。
つまり、ゲレゲレが信頼しているもう1人の人物、ビアンカに主人公たちの異変を知らせるためにパパスの剣を運んだのではないでしょうか。これなら重い剣をわざわざ運ぶ理由として妥当です。したがって、ゲレゲレが古代の遺跡を発って最初に目指したのはアルカパだと考えられます。
古代の遺跡からアルカパへ
古代の遺跡からアルカパへの経路はゲレゲレも一度通っています。意図して形見の剣を運ぶという選択をするぐらい知能の高いモンスターですから、アルカパへのルートは覚えていたことでしょう。
現実世界でも犬や猫に帰巣本能が確認されていますから、ゲレゲレがアルカパをまっすぐ目指せたことに特に疑問はありません。
唯一障害となるのはラインハットの関所ぐらいでしょうか。ただ、この関所も
- 門番が割といい加減
- ラインハット軍がサンタローズへ侵攻する混乱に乗じて通過した
- 川を泳いで渡った
など、通過できる隙は十分にあります。事実、最終的にゲレゲレは西の大陸に渡るわけですから、この辺りの隙をついて関所を抜けたに違いありません。
アルカパでビアンカとすれ違い
しかし、残念ながらゲレゲレはビアンカとの再会は果たせなかった。
ご存知の通り、ビアンカは母親の療養のため山奥の村に引越してしまうからです。そこから目的を失ったゲレゲレが取れる選択肢は2つ。
幸い、アルカパ周辺はゲレゲレの故郷であり、野生のベビーパンサーが生息している地域でもあります。野生に帰って生きるという選択肢を取るのに最適な環境は整っています。
もしくは、その選択を捨ててアテもない主人公やビアンカを探す旅を続けるか。後者を選んだ場合、孤独で辛い旅になるのは明白です。ゲレゲレもどちらの選択をすべきか葛藤したのではないでしょうか。
しかし、最終的に彼はまた旅を続けることになります。
アルカパから西の大陸へ
いずれにせよ、ゲレゲレはアルカパを後にする必要があったのかもしれません。
というのは、幼年期と青年期の間でアルカパ周辺に生息するモンスターが大幅に変わってしまうからです。
幼年期では
- おおねずみ
- グリーンワーム
- くびながイタチ
- ドラキー
といった弱いモンスターに混ざる形で野生のベビーパンサーも生息していましたが、青年期では
- がいこつへい
- おばけきのこ
- エビルアップル
など、より強力なモンスターが生息するようになり、ベビーパンサーの姿も見られなくなります。
アルカパ周辺で野生として生きるにも苦しい環境となり、半ば追いやられるようにして旅を続けたのではないでしょうか。
故郷に居場所を失ったことと、主人公やビアンカがもうその大陸にいないこと。2つの理由が重なって西の大陸を目指すことにしたのだと思います。
西の大陸への移動手段について考える
西の大陸へ渡るには当然海を越えなければなりません。人間であればともかく、ゲレゲレが海を渡るのは一筋縄ではいきません。
引き続き、彼が海を渡った手段についても考えていきます。
ビスタ港から船に乗った
ビスタ港からポートセルミへは定期船が出ています。青年期に主人公が西の大陸へ渡るのもこの手段です。ゲレゲレが海を越えた手段の1つとして考えられなくはありませんが、なんといってもモンスター1匹。正面から乗り込んで素直に乗せてもらえるはずがありません。
乗るとするならば船員に見付からないよう忍び込む必要があります。
また、そもそもゲレゲレは「船」という乗り物の概念を理解していたのでしょうか。少なくとも幼年期の主人公との旅の道程で船に触れる機会はありません。したがって
- 船とは何であるのか?
- この船はどこへ向かうのか?
といった船を利用する根本的な目的を理解していたかどうかが大いに疑問です。
船がどういうものであるかを理解し、船員に見付からずに忍び込まなければならないという二重の理由から、ゲレゲレが西の大陸へ船で渡ったということは考えにくいです。
泳いで渡った
大陸間をパパスの剣を運びながら泳いで渡るというのは並大抵のことではないでしょう。命懸けになります。
キラーパンサーの遊泳能力について詳しい情報はありませんが、一応他作品「ドラゴンクエストモンスターズジョーカー3」などでは、主人公を背中に乗せた上で水面を泳ぐ姿を見ることは可能です。
また、キラーパンサーのモデルは豹。現実世界の豹、ジャガー、虎といったネコ科の動物も積極的に泳ごうとはしないものの、泳ぎは得意だとされています。
キラーパンサーについても「泳ぎに特化しているわけではないがそれなりに達者」といったところでしょうか。基礎的な身体能力の高さはプラスの要素として考えられます。
これらを踏まえると、大陸間を泳ぎ切ることに対して楽観視はできませんが、全くの不可能と言うわけでもなさそうです。
続いて興味深い点がもう1つ。
実は2大陸間の距離が最も近い場所がアルカパの南西に存在しています。
西側の大陸の一部が突き出しており、東側の大陸に迫る形となっています。その距離は山奥の村とサラボナの間に流れている川幅と同じか、それより狭いぐらいです。
ちょうどゲレゲレが立ち寄ったと思われるアルカパから近いという要素も兼ね備えており、この地点から海を渡った可能性は大いにあると考えます。
さらに面白いのは、アルカパ南西から西の大陸へ渡った場合、ルラフェンの北東部に辿り着くのですが、このエリアは野生のキラーパンサーが生息している地域でもあります。
青年期になってアルカパ周辺から姿を消した野生のベビーパンサーたちが自分たちが適応できる新たな環境を求めて西の大陸へ移っていった・・・とするのはさすがに乱暴ですが、ことゲレゲレだけに関して言えば、このルートで西の大陸に渡ったのではないかと思っています。
↑西の大陸へ渡る頃には既にベビーパンサーからキラーパンサーへと力強い成長を遂げていたのでしょうね。
西の大陸に移った後の行動
野生のキラーパンサーが生息するルラフェン北東部。
ここはキラーパンサーが生きていく上で必要な食料が手に入りやすい環境なのでしょう。ただ、ゲレゲレはそこに馴染むことができなかったはずです。
なぜなら、彼は人を襲わないキラーパンサーだから。したがって、他のキラーパンサーにとって最適な生存環境であってもゲレゲレにとっての最適な生存環境とはなり得なかったのでしょう。
そうしてさらに生存に最適な環境を求めた結果、最終的に野菜が豊富なカボチ村周辺に落ち着いた。
そしてこの頃になると、ゲレゲレも少しずつ魔性を取り戻し始めていたのではないでしょうか。主人公と再会した時も「ビアンカのリボン」というきっかけがあってなんとか明確に主人公のことを思い出せたという点からも、彼が魔性を取り戻し始めていたことが伺えます。
そうして主人公たちのことを忘れ始めた中、最終的にカボチ村という人を襲わずに生きていける環境に留まることになったのだと思います。徐々に精神に侵食してくる魔性との闘いの中、パパスの剣だけがゲレゲレの理性をギリギリのところで繋ぎとめていたのではないでしょうか。
以上がゲレゲレが幼年期と青年期の間に取った行動の経緯だと考えます。
まとめ
ゲレゲレは古代の遺跡→アルカパ→海を渡って西の大陸→カボチ村というルートを通った。その過程には主人公の身に起こった異変をビアンカに知らせようとする思いや、野生に帰って生きていくための最適な環境探しという動機があった▼
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